アメリカで結婚契約書の思想が日本にも浸透中
アメリカの資産家の間では、結婚を前にしたパートナーが、これから迎える夫婦生活や親戚づきあいなど、家族としての新しい関係を築き上げるにあったって必要な事柄を、あらかじめ取り決めておくという考えが浸透しています。
これを「結婚契約書」、英語では「プレナップ(Prenup:Prenuptial Agreementの略)」と呼んでいます。
2010年2月20日のasahi.comに記載された離婚訴訟に詳しいマーリンブラウン弁護士の弁によると、アメリカで婚前契約は30年ほど前から結ばれるようになり、主な目的は離婚や死別に備えて、財産の区分けをあらかじめ決めておくのが狙いでした。
それも、富豪や有名人などの大きな資産や個人で大金を稼ぐ力を持つ人物が、それほど資産を持たない相手を結婚相手に選んだ時に結ぶのが一般的だったといいます。
この「結婚契約書」がにわかに一般の人に浸透する事件がありました。
かの有名なプロゴルファー、タイガーウッズ氏の一連の浮気スキャンダルです。彼のおどろくべき醜聞は太平洋を飛び越えて日本でも離婚やむなしだと思われていました。しかし、夫婦間で婚前に交わした結婚契約書があったことが報道され、結果的にはウッズ氏が契約書に守られた形で事態が決着したのでした。
日本国内でも、民法にて夫婦財産契約という規定があり、財産分与についての規定があります。
ところがあまり一般的でないので知っている人が少なかったこと、離婚を前提とするマイナスイメージが先行してしまい忌避されたこと、婚姻の届け出を出す前に行う必要があること、契約を法務局に登記しなければならないこと、手続きが煩雑であること、婚姻の届出後は夫婦の財産関係の変更に制限がかかり事実上は変更できないなどから、利用者はほとんどいません。
そこで、国内でも「結婚契約書」という自由度の高い契約書を作成するという考えが広まってきたのです。
その内容は、
- 結婚前の個人の資産の扱い
- 家族から受け継いだ資産の扱い
- 日常的な生活費の分担方法について
- 日常的なカジノ分担について
- 二人の小遣いについて
- 貯金の目標や扱いについて
- 健康看護介護について
- 妻の就業について
- 結婚記念日やお互いの誕生日のアニバーサリーについて
- 親戚づきあいについて
- 子どもができたときの気になる点
- 離婚に発展しかねない、浮気と考えられる行動の具体例
- 離婚に至った場合の慰謝料などの金額
- それぞれ一方が、相手より先に死別した場合
などです。
日本では法律に基づいたものではありません。
そのために、契約に盛り込む内容は各夫婦が自由に決めることが出来ます。
また、勤め先の倒産や身内の介護、身内の借金の肩代わりなど、予測できない未来も生じるため、結婚後でもいつでもその内容を変更することができます。
というのは、結婚契約書の目的が夫婦であるために二人の間に生じるかもしれない未来のトラブルを、お互いが納得できる形で乗り越えるためにあります。
そのためにお互いが譲れないと思うことを決まり事として明文化し、お互いの考えを理解して置くことに目的があるためです。
結婚契約書のポイント
大きくポイントは4つです。
- 契約の当事者は、夫となる人と妻となる人の当人同士であること。
- 結婚契約書に記載する内容は、各夫婦で自由。
- 結婚契約書の作成のポイントは、夫と妻のそれぞれの考えを明文化し、将来のトラブルに備えるもの。
- 結婚後にも契約書の内容を変更することができる。